保険適用の矯正治療
矯正歯科治療は、基本的に健康保険が適用できません。
ほとんどの場合「自由診療」になるため、治療費が高額になってしまいます。
しかし、国が定めた特定の症状に限り、保険適用による矯正歯科保険診療が可能です。当院は「健康保険適用の矯正歯科治療ができる施設」として、
厚生労働省より認定されています(指定自立支援医療機関および顎口腔機能診断料算定の指定医療機関です)。以下の症状が疑われる患者さまは、ぜひ一度ご相談ください。
●顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療
顎変形症とは、上下のあごの骨の大きさや形、位置などに異常がある状態のことです。噛み合わせが悪くなるため、食べ物がうまく噛めなかったり、発音が困難になることがあります。また、顔の形が変形し、精神的ストレスの要因にもなり得ます。原因は遺伝的な影響が多いとされ、生まれつきの病気や骨折も影響します。
●「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
- 唇顎口蓋裂
- ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
- 鎖骨頭蓋骨異形成
- トリーチャ・コリンズ症候群
- ピエール・ロバン症候群
- ダウン症候群
- ラッセル・シルバー症候群
- ターナー症候群
- ベックウィズ・ウイーデマン症候群
- 顔面半側萎縮症
- 先天性ミオパチー
- 筋ジストロフィー
- 脊髄性筋委縮症
- 顔面半側肥大症
- エリス・ヴァンクレベルド症候群
- 軟骨形成不全症
- 外胚葉異形成症
- 神経線維腫症
- 基底細胞母斑症候群
- ヌーナン症候群
- マルファン症候群
- プラダー・ウィリー症候群
- 顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
- 大理石骨病
- 色素失調症
- 口腔・顔面・指趾症候群
- メビウス症候群
- 歌舞伎症候群
- クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
- ウイリアムズ症候群
- ビンダー症候群
- スティックラー症候群
- 小舌症
- 頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
- 骨形成不全症
- フリーマン・シェルドン症候群
- ルビンスタイン・ティビ症候群
- 染色体欠失症候群
- ラーセン症候群
- 濃化異骨症
- 6歯以上の先天性部分無歯症
- CHARGE症候群
- マーシャル症候群
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
- ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
- リング18症候群
- リンパ管腫
- 全前脳胞症
- クラインフェルター症候群
- 偽性低アルドステロン症
- ソトス症候群
- グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
- 線維性骨異形成症
- スタージ・ウェーバ症候群
- ケルビズム
- 偽性副甲状腺機能低下症
- Ekman-Westborg-Julin症候群
- 常染色体重複症候群
- 巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
- 毛 ・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)
- リッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)
- アラジール症候群
- 高IgE症候群
- エーラス・ダンロス症候群
- ガードナー症候群(家族性大腸ポリポージス)
- その他顎・口腔の先天異常
●前歯及び小臼歯の永久歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療
矯正治療の流れ
一般的に以下のような流れで矯正治療を行なっています。
症状や使う装置により工程が異なることがあるので、詳しくは実際の治療のときにご説明します。
初診カウンセリング
お口の中を診察し、カウンセリングします。
矯正治療について気になっていること、疑問、ご要望などをお聞きしたうえで、矯正治療担当医が治療の適切な開始時期、使用が予測される装置、治療期間、治療費などについてご説明いたします。年齢が高校生以下の方は、ご家族の方とご来院ください。
精密検査
より詳しい情報を得るため、精密検査を行ないます。口腔内・顔面写真撮影、頭・歯部レントゲン撮影により、現在の歯並びの状態を把握します。また、歯並びの模型を作って噛み合わせを確認します。そのほか、必要に応じて、顎関節のレントゲン写真撮影や顎機能検査(顎の動きを調べる検査)を行ないます。
診断(治療計画説明)
精密検査の結果をもとに、今後の治療計画について具体的にご説明します。また、治療法・期間、ご希望の矯正装置などをもとに、治療費を決めます。矯正治療についての疑問などを解消でき、治療内容・方針についてきちんとご理解・ご満足いただけるようであれば、次回から本格的な矯正治療を始めます。
歯磨き指導・口腔内清掃
矯正治療が始まると、歯に装置がつき歯ブラシが細部まで届きにくくなるため、虫歯には注意が必要です。そのため、歯磨きや口腔内清掃についての知識と技術をご指導させていただき、矯正装置の装着へと進みます。
装置装着・動的治療開始
矯正装置をつけた後、通常は3~6週間に1回の頻度で通院していただき、治療計画に基づいて矯正装置やワイヤーの調整などを行ないます。
個人差がありますが、平均的な治療期間は約2年半です。
保定期間・メンテナンス
噛み合わせと歯並びが整ったところで、保定装置によるメンテナンス期間に入ります。装置を外した後の歯は、何もしなければ元に戻ろうと少しずつ動いてしまう『後戻り』をしてしまうので、動かした歯を支える骨や歯周組織が安定するまで、保定装置をつけます。この期間は、矯正治療後のアフターケアを行なううえでとても大切です。 さまざまな矯正装置のなかから、もとの不正咬合の状態に合わせた保定装置を選びます。2~6ヵ月に1回の頻度で定期検診を受診いただきます。この間に咀嚼や発音など口周りの動きと、歯並び・歯との調和がとれてきます。保定期間・メンテナンスの長さは約2年となりますが、来院できればその後も経過観察を続けていきます。
矯正治療にともなう一般的なリスク・副作用
- ・矯正治療の一般的な治療費は60万~150万円、一般的な治療期間は2~3年、一般的な治療回数は24~36回となります。使用する装置、症状や治療の進行状況などにより変化しますので、参考程度にお考えいただき、詳細は歯科医師にご確認ください。
- ・機能性や審美性を重視するため、公的健康保険対象外の自費診療となり、保険診療よりも高額になります。
- ・最初は矯正装置による不快感、痛みなどがあります。数日から1~2週間で慣れることが多いです。
- ・治療期間は症例により異なりますが、成人矯正や永久歯がすべて生えそろっている場合は、一般的に1年半~3年を要します。小児矯正においては、混合歯列期(乳歯と永久歯が混在する時期)に行なう第1期治療で1~2年、永久歯がすべて生えそろったあとに行なう第2期治療で1~2年半を要することがあります。
- ・歯の動き方には個人差があるため、治療期間が予想より長期化することがあります。
- ・装置や顎間ゴムの扱い方、定期的な通院など、矯正治療では患者さまのご協力がたいへん重要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
- ・治療中は、装置がついているため歯が磨きにくくなります。虫歯や歯周病のリスクが高まるので、丁寧な歯磨きや定期メンテナンスの受診が大切です。また、歯が動くことで見えなかった虫歯が見えるようになることもあります。
- ・歯を動かすことにより歯根が吸収され、短くなることがあります。また、歯肉が痩せて下がることがあります。
- ・ごくまれに、歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
- ・ごくまれに、歯を動かすことで神経に障害を与え、神経が壊死することがあります。
- ・治療中に金属などのアレルギー症状が出ることがあります。
- ・治療中に、「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口をあけにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- ・問題が生じた場合、当初の治療計画を変更することがあります。
- ・歯の形状の修正や、噛み合わせの微調整を行なうことがあります。
- ・矯正装置を誤飲する可能性があります。
- ・装置を外すときに、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、補綴物(被せ物など)の一部が破損することがあります。
- ・装置を外したあと、保定装置を指示どおりに使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- ・装置を外したあと、現在の噛み合わせに合わせて補綴物(被せ物など)の作製や虫歯治療などをやり直す可能性があります。
- ・顎の成長発育により、歯並びや噛み合わせが変化する可能性があります。
- ・治療後に、親知らずの影響で歯並びや噛み合わせが変化する可能性があります。
- ・加齢や歯周病などにより、歯並びや噛み合わせが変化することがあります。
- ・矯正治療は、一度始めると元の状態に戻すことが難しくなります。